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PSRとRule of 40——赤字グロース株を比較するための物差し
最終更新: 2026-08-13T00:00:00.000Z
PSR(Price to Sales Ratio・株価売上倍率)は「時価総額 ÷ 売上高」で計算します。利益ではなく売上を分母に取るため、赤字企業でも計算できるのが最大の特徴です。SaaSやバイオなど、先行投資で赤字が続く成長企業を比較するときの主力指標になります。
PSRが高い=市場が成長を織り込んでいる
PSRが10倍を超えるような企業は、市場が「売上が今後何倍にも成長し、いずれ高い利益率で回収できる」と織り込んでいることを意味します。逆にPSR1倍以下は、売上規模の割に評価が低い状態です。
ただしPSRにはPER以上に大きな落とし穴があります。利益率の違いを無視してしまうことです。同じ売上100億円でも、営業利益率30%のソフトウェア企業と3%の小売企業では、生み出す利益が10倍違います。PSRの比較が意味を持つのは、ビジネスモデルが近い同一業界内だけと考えてください。実際、本サイトの業界比較ページを見ると、SaaS業界と自動車業界ではPSRの中央値が一桁違うことが確認できます。
業界内でもPSRは二極化する
同じ業界でも、PSRは上位と下位で数倍の開きが出ることが珍しくありません。高PSR側には「売上成長率が高い」「粗利率が高い」「解約率が低い」企業が集まり、低PSR側には成長が鈍化した企業が集まります。つまり業界内のPSRの分布は、市場がどの企業の成長を信じているかの縮図です。本サイトの業界ページでは、PSR上位3社と下位3社の乖離が大きい場合に自動でコメントが付きます。
Rule of 40——成長と利益のバランスを1つの数字で見る
赤字グロース企業を評価するとき、「赤字なのはダメなのか、それとも攻めの投資なのか」を判別する目安として使われるのがRule of 40です。計算は簡単で、「売上成長率(%)+営業利益率(%)」が40を超えていれば合格、というものです。
たとえば、売上成長率50%・営業利益率−5%の企業はスコア45で合格です。赤字でも、それを上回る成長を実現しているなら投資は正当化できる、という考え方です。逆に成長率10%・利益率10%のスコア20の企業は、成長も利益も中途半端で、市場の評価が下がりやすいゾーンにいます。
もともとはSaaS業界の経験則ですが、売上の継続性が高いビジネスなら応用が利きます。本サイトの業界ページでは、各社のRule of 40スコアを自動計算し、40超えの企業数をコメントに表示しています。
実践: PSRとRule of 40はセットで使う
PSRだけを見ると「高すぎて買えない」「安いから買い」という単純な結論に流れがちです。そこにRule of 40を重ねると、「PSRが高いがスコアも突出して高い(高評価に根拠がある)」「PSRが低くスコアも低い(安いなり)」といった解像度で業界を眺められるようになります。まずは業界ページでPSRの分布とRule of 40の顔ぶれを確認するところから始めてみてください。
補足: PSRの歴史的な水準感
PSRの「適正水準」は市場環境によって大きく変動してきました。低金利期にはSaaS上位企業のPSRが30〜40倍まで買われた一方、金利上昇局面では同じ企業が10倍前後まで売られた例もあります。将来のキャッシュフローを現在価値に割り引く際、金利が上がるほど遠い将来の売上の価値は小さくなるためで、高PSR株ほど金利変動に敏感という性質は覚えておいて損がありません。業界のPSR中央値を定点観測しておくと、市場全体の強気・弱気の温度感も読み取れるようになります。